
潮汐
気象潮 ― 潮見表どおりにならない日
最終更新: 2026-08-03
潮見表を見て出かけたのに、水位が明らかに違う——そういう日があります。潮見表が間違っているわけではなく、そこに含まれていない要素が働いています。
天文潮位と実測潮位
気象庁の整理では、潮位は二つに分けて考えます。
- 天文潮位:過去の観測データの解析をもとに計算した予測値。月や太陽の引力によって生じる潮汐
- 実測潮位:実際に観測される値。気象などの要因を受けるため、天文潮位とは異なる
そして両者の差を潮位偏差と呼びます。実際の潮位は、天文潮位に潮位偏差を加えたものです。
潮見表に載っているのは天文潮位です。つまり月と太陽の分だけを計算した数字であり、その日の空模様は入っていません。
気圧が海面を吸い上げる
潮位偏差を生む代表が気圧です。高潮のメカニズムのひとつ、吸い上げ効果では、
1hPaの気圧低下につき、約1cmの潮位上昇
という関係が知られています。標準的な1013hPaから、低気圧で990hPaまで下がれば、それだけで20cm以上。台風接近時の潮位が予測を大きく超えるのは、この積み上がりによります。
風は2乗で効く
もうひとつが吹き寄せ効果です。沖から海岸に向かって風が吹くと、海水が海岸へ吹き寄せられて海面が上昇します。
重要なのは、吹き寄せによる海面上昇は風速の2乗に比例するという点です。風速が2倍になれば、押し上げる力は4倍。風は線形には効きません。
「大潮+低気圧+強い南風」が危険な組み合わせとして語られるのは、天文潮位の高さに、吸い上げと吹き寄せが同時に上乗せされるからです。
予測は前提であって、確定ではない
釣りの視点で言えば、二つの意味があります。
ひとつは、潮見表どおりに水位が来ない日があること。読み違えたのではなく、気象が上乗せしていることがある。
もうひとつは安全の話です。増水と濁りでも触れましたが、荒天時の水位は予測を超えます。潮見表の満潮時刻と高さを見て「まだ大丈夫」と判断するのは、条件が揃った日には通用しません。
潮見表は月と太陽の答えであって、その日の海の答えではない——そう捉えておくのが安全です。
出典・根拠
- 潮汐・海面水位のデータ 潮位表 解説 - 気象庁 https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/suisan/explanation.html
- 高潮について - 神戸港防災ポータルサイト(神戸市港湾局)https://kobeko-bousai.jp/about_tide/
- 潮位 - 日本港湾協会 https://www.phaj.or.jp/book/20240415/kaisyaku/p108-121-3.pdf