
潮汐
彼岸潮は年一番ではない ― 通説を潮位表で確かめる
最終更新: 2026-08-03
釣りの世界には、繰り返し語られるうちに事実として定着した話がいくつもあります。「彼岸潮は一年で最大の大潮」もそのひとつです。
通説の中身
大潮は月に2回、月・地球・太陽がほぼ一直線に並ぶ満月と新月の時期に起こります。その上で、春分・秋分の頃は太陽だけでなく月も赤道付近にあるため、一年でもっとも大きな潮汐になる——というのが従来の説明でした。
理屈としては筋が通っています。実際、百科事典にもそう記載されてきました。
潮位表で確かめると
ところが実測値を見ると、話が変わります。有明海・大浦検潮所の2018年の潮位差は、
- 春の彼岸(3月21日前後):426cm
- 秋の彼岸(9月23日前後):446cm
- 夏(6月14日):496cm
- 冬(1月2日):544cm
彼岸が最小で、冬が最大でした。しかもこれは有明海だけの話ではなく、夏や冬の潮位差が大きくなるのは全国的な傾向とされています。
なぜ彼岸が特別視されたのか
理由として、月の近地点の周期変動が指摘されています。月と地球の距離は一定ではなく、近いときほど起潮力は強くなる。月の最大赤緯と近地点の両方を考慮すると、日本では夏と冬に大潮の潮差が年最大になる、という解析があります。
一方、彼岸が特別視されてきた背景については、太陽が真西に沈む日という仏教的な特別性から、特別な大潮と考えられてきたのではないか、という見方が示されています。天文ではなく文化に由来する通説だった可能性があるということです。
通説を疑う手がかりがある
この件が面白いのは、誰でも検証できることです。気象庁は全国の潮位表を公開しており、自分の通う海の一年分を眺めれば、いつが本当に大きいのかは自分で確かめられます。
潮回りの仕組みを理解し、干満差が場所ごとに違うことを知った上で、最後に効くのはこれです。言い伝えではなく、自分の海の数字を見ること。
彼岸潮の話は、釣りの経験則がどこまで確かで、どこから伝承なのかを考えるいい題材だと思います。
出典・根拠
- 「"彼岸潮"は年一番の大潮」は間違いだった!? - ウェザーニュース https://weathernews.jp/s/topics/201809/210065/
- 彼岸潮は年極小(久保田効)- 海洋気象学会「海の気象」https://www.yoho.jp/member/umi/bunken/higanshio_kubota.pdf
- 暦部「潮汐」をくわしく解説!- 理科年表オフィシャルサイト https://official.rikanenpyo.jp/posts/6106