
季節と水温
水温は1ヶ月遅れてくる ― 暦とずれる海の季節
最終更新: 2026-08-03
「もう10月なのに夏の魚が釣れる」「4月なのに全然春らしくない」——釣りをしていると、暦と海の様子が噛み合わない場面によく出くわします。これは感覚のズレではなく、実際に海の季節が遅れて動いているためです。
約1ヶ月のずれ
日本周辺海域では、表層の水温は気温の変化に約1ヶ月遅れて変化します。
- 気温:1〜2月に最も低く、7〜8月に最も高い
- 水温:2〜3月に最も低く、8〜9月に最も高い
一年で最も暑いのは8月ですが、海が最も温まっているのは8月後半から9月。残暑が終わって涼しくなり始めた頃、海はまだ夏のピークにいるということです。
理由は「比熱」
このずれを生むのは、大気と海水の比熱の違いです。水は温まりにくく冷めにくい性質を持つため、気温の変化がそのまま即座に水温に反映されず、遅れて追いかける形になります。
陸の季節が先に動き、海が後からついてくる。この時間差が、釣りにおける「暦と釣果のずれ」の正体です。
深いほど、もっと遅れる
さらに興味深いのは、この遅れが深さによって拡大することです。兵庫県但馬沖の観測では、表層のピークが8〜9月なのに対し、
- 50m深:11月が最も暖かい
- 100m深:12月が最も暖かい
海面が冷え始めてもなお、深い層では熱が届き続けて水温が上がっていく。海水が鉛直方向に混ざり合う際、熱が順々に深い層へ伝わっていくためです。
年末の海の底が、その年で最も暖かい——直感に反しますが、これが海の構造です。
暦ではなく水温で考える
この事実が意味するのは単純です。「何月だから」で釣りを組み立てると外すということ。
秋が深まってもまだ夏の魚が残っているのは、海がまだ夏だからです。春の訪れが遅く感じるのは、実際に海の春が1ヶ月遅れているからです。同じ「11月」でも、表層と深場では季節がまるで違う場所にいます。
カレンダーは陸の季節を示します。海の季節を知りたければ、水温を見るしかありません。
出典・根拠
- センター雑感(水温の季節変化)- 兵庫県立農林水産技術総合センター 水産技術センター https://hyogo-nourinsuisangc.jp/archive/17-zakkan/article/zakkan_02110.html
- 海水温・海流の知識 海面水温 - 気象庁 https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/sst.html
- 日本近海 月平均海面水温 - 気象庁 https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/db/kaikyo/monthly/sst_HQ.html