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概潮汐リズム ― 生き物が持つ12.4時間の時計

潮汐

概潮汐リズム ― 生き物が持つ12.4時間の時計

最終更新: 2026-08-03

潮が満ちれば水に沈み、引けば空気にさらされる。潮間帯という場所は、1日に2回、環境が根本から入れ替わります。そこで暮らす生き物たちは、潮を「感じて」対応しているのでしょうか。それとも——。

約12.4時間という周期

潮汐サイクルの周期は約12.4時間です。1日にほぼ2回の干満が訪れる。この周期に対応した生物リズムを概潮汐リズムと呼びます。

時間生物学という分野は、太陽や月が作り出す一日・一年・潮汐といった周期に適応したリズムを研究対象にしています。潮汐は、生き物にとって単なる外部環境ではなく、体に組み込まれたリズムの源でもあるということです。

潮を遮断しても、動き続ける

決定的なのは、潮の情報を断った実験です。

潮間帯に生息するいくつかの地表性昆虫は、野外では潮汐サイクルに合わせて活動しますが、恒常条件下——つまり潮の手がかりがない環境に置いても、約12.4時間周期の活動リズムが継続します。

外から潮を教えられているのではなく、体の中に時計を持っている。だから満潮時の危険を避け、干潮に合わせて活動できる。

ふたつの時計を持つ生き物

研究はさらに進んでいます。海生生物には、24時間周期の概日時計とは別に、潮汐や月の周期に対応した時計があることが分かってきました。

海生の環形動物(Platynereis dumerilii)と、ダンゴムシの親戚にあたる海生の甲殻類(Eurydice pulchra)を対象にした研究では、1日サイクルの体内時計を担う遺伝子の発現を阻んでも潮汐リズムが残り、2つの時計が独立していることが示されました。

甲殻類では2つの独立した時計が確認され、両者の連携関係は確認できなかったと報告されています。太陽の時計と月の時計が、別々に動いている。

餌の側にも時計がある

釣り人にとっての含意は、狙う魚だけを見ていては足りない、ということかもしれません。

ゴカイも、甲殻類も、貝も——干潟や磯を支える生き物たちが、それぞれ潮の時計を持って動いている。魚が潮で動くのは、魚自身のリズムだけでなく、餌が潮のリズムで動くからでもあります。

潮回りを読むという行為は、水位や流れを予測するだけでなく、その時刻に何が動き出すかを想像することでもある。海の生き物にとって潮は、天気ではなく時刻そのものです。

出典・根拠

  • 海洋生物に2つの体内時計、人間も? - ナショナル ジオグラフィック日本版 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8392/
  • 潮間帯に生息する地表性昆虫の活動リズムと体内時計 - Edaphologia(日本土壌動物学会)https://www.jstage.jst.go.jp/article/edaphologia/85/0/85_KJ00005697630/_article/-char/ja/
  • 時間生物学用語集 - 日本時間生物学会 https://chronobiology.jp/時間生物学用語集/