
潮汐
干潟 ― 1日2回、海になったり陸になったり
最終更新: 2026-08-03
潮が引くと現れ、満ちると消える。干潟は、潮汐という現象がつくり出した特殊な地形です。海でも陸でもない場所が、1日に2回入れ替わる。
定義と成り立ち
環境省のせとうちネットによれば、干潟とは「1日に2回、干出と水没を繰り返す平らな砂泥地」です。
できる条件は限られています。波浪の影響を受けにくい穏やかな入り江や湾内で、砂泥を供給する河川が流入する場所。つまり潮汐と河川の両方が要るということです。
タイプは3つに分けられます。
- 前浜干潟:河川放流路の両側、砂浜の前面
- 河口干潟:河川の河口部
- 潟湖干潟:湾状に入り込んだ湖沼の岸
瀬戸内海の干潟は、大部分が前浜干潟と河口干潟です。
巨大な浄化装置
干潟の機能で最も驚かされるのは、水質浄化の規模です。
付着藻類や植物プランクトンが栄養塩を消費し、砂泥中のバクテリアが有機物を分解する。そして潮汐による干出と水没が、海水中に大量の酸素を供給して分解を促進します。潮の満ち引きそのものが、装置を動かすポンプになっている。
数字で見ると、ある干潟では海に1日に流入する窒素2.4トンのうち1.3トンが干潟で取り除かれていると報告されています。およそ半分です。
ゴカイ類や貝類がバクテリアの付着した有機物を食べ、それが魚や鳥に食べられる。有機物は分解されて消えるのではなく、生物へと姿を変えていきます。
食べる場所であり、育つ場所
干潟では、底生藻類や海藻を生産者、ゴカイなどの底生動物・魚類・鳥類を消費者とする食物連鎖が成り立っています。アサリのような二枚貝、ゴカイ類、カニやヨコエビ——足元の泥の中に、膨大な餌が詰まっている。
汽水域が「育つ場所であり通り道であり餌場」だと書きましたが、干潟はその機能が最も濃縮された形だと言えます。満潮時に魚が差してくるのは、そこに餌があると知っているからです。
70年で3分の1に
最後に、事実として書いておくべき数字があります。
日本の干潟の面積は、1950年代には約42,000haあったものが、2022年には約15,000haまで減少しました。3分の1近くです。
浄化機能を持ち、稚魚を育て、鳥を養う場所が、この規模で失われてきた。干潟の前に立つとき、そこが「たまたま残っている場所」だという認識は持っておきたいと思います。
出典・根拠
- せとうちネット:干潟とは - 環境省 https://www.env.go.jp/water/heisa/heisa_net/setouchiNet/seto/g1/g1chapter3/mobahigata/higatatowa/index.html
- 干潟生態系の特性 - 環境省 https://assess.env.go.jp/files/0_db/contents/0096_02/h19_higata_02.pdf
- 干潟の生き物のはたらきを探る - 国立環境研究所「環境儀」https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/45/02-03.html