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溶存酸素 ― 水温が上がると、息が苦しくなる

季節と水温

溶存酸素 ― 水温が上がると、息が苦しくなる

最終更新: 2026-08-03

水温と活性の話をすると「では暖かいほど魚は元気なのか」という疑問が残ります。答えは否で、真夏には別の制約が立ちはだかります。酸素です。

温度が上がると、酸素は溶けなくなる

水温と溶存酸素量は反比例の関係にあります。温度が上昇するほど、水に溶ける酸素の量は減少する。気体は水温が低いほど水に溶けやすいという性質があり、海水温が高い低緯度ほど酸素量は少なくなります。

飽和溶存酸素量とは、その水温・気圧のもとで水と大気が平衡状態にあるときに溶け込んでいる酸素の濃度のことで、1気圧・25℃では8.11mg/Lとされています。水温が下がればこの値は上がり、上がれば下がる。

つまり真夏の魚は、代謝が上がって酸素をより多く必要としているのに、水に溶けている酸素は減っているという板挟みに置かれます。

二重の締めつけ

高水温期に反応が消える理由は、ひとつではありません。

  • 水温が上がる → 代謝が上がる → 必要な酸素が増える
  • 水温が上がる → 飽和溶存酸素量が下がる → 使える酸素が減る

需要が増えて供給が減る。この二重の締めつけが、真夏の日中に魚が動かなくなる背景にあります。「暑くてバテている」という擬人化された言い方は、案外、生理的な実態から遠くありません。

深いほど良い、とも限らない

では涼しい深場に落ちれば解決かというと、そう単純でもありません。水温躍層が発達している時期は上下の水が混ざらないため、底層には酸素が供給されにくくなります。

国立環境研究所が世界393湖沼の長期観測を解析した研究では、1980年から2017年の間に溶存酸素が表層で0.45mg/L(5.5%)、底層では0.42mg/L(18.6%)減少していました。底層のほうが減少率が大きい。その原因として、透明度の低下に加えて表層と底層の水温差による密度差の増加が挙げられています。

上は暑く、下は酸素が薄い。夏の水中は、思ったより逃げ場が少ない場所です。

涼しい水が動いている場所

この理解が示唆する狙いどころは、単に「深い場所」ではなく酸素が供給されている涼しい水です。

流れ込み、潮通しの良い場所、白波の立つサラシ、水面が波立っている区間——いずれも大気と水が接触して酸素が溶け込む条件を備えています。夏に「流れのある場所」が効くのは、餌が流れてくるからだけではないのかもしれません。

出典・根拠

  • 溶存酸素と温度の関係 - ハンナ インスツルメンツ・ジャパン https://hanna.co.jp/relation_between_do_and_temp.html
  • 水温上昇と水質悪化により湖沼の溶存酸素量が減少 - 国立環境研究所 https://www.nies.go.jp/whatsnew/20210602/20210602.html
  • 海洋内部の知識 溶存酸素量 - 気象庁 https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/mar_env/knowledge/koyusui/yozonox.html