
魚種
ダツ ― 光に突進する、表層のスプリンター
最終更新: 2026-08-03
河口や港湾の表層を、細長い影が矢のように走っていく。ルアーを追ってきたのに乗らず、水面を割って跳ねる——ダツ(Strongylura anastomella)は、狙って釣る魚というより「出てきてしまう魚」として出会うことが多い相手です。外道として扱われがちですが、その体のつくりと習性を知ると、これがかなり特異な魚だと分かります。
上下ともに長い顎という設計
ダツはダツ目ダツ科の魚で、最大の特徴は前方に長く伸びた両顎です。上顎・下顎がともに細長く伸び、その内側に針のような鋭い歯が並びます。
同じダツ目のサヨリとよく混同されますが、見分けは簡単です。サヨリは下顎だけが長く伸び、上顎は短い。ダツは上下ともに長く鋭い。体格もサヨリが成魚で30〜40cm程度なのに対し、ダツは70cm〜100cmほどまで成長します。細長いシルエットが似ていても、正面から見れば別物です。
光に向かって突進する
ダツは沖合いから沿岸の表層に生息し、小魚を主食とする魚食性の捕食者です。そして、光に集まる習性を持ちます。とくに夜間は光源に向かって突進してきます。
これは餌となる小魚の鱗の反射を目印にする性質と結びついていると考えられていますが、結果として厄介な事態を招きます。環境省のせとうちネットは、ダツを「危険な生き物」として明記しています。毎年ダツに刺されて怪我をする事故が起こっており、首筋などに突き刺さり出血多量で死亡した例もある、と。
夜間潜水でライトを照らす行為は特に危険とされています。刺された場合は血管を損傷している可能性があるため、無理に抜かずに医師の治療を受けることが重要です。ダツ自体は毒を持ちませんが、口腔内の細菌や海水由来の菌による感染症のリスクがあります。
夜の港でライトを水面に向ける——ライトゲームでは何気なくやってしまう動作が、この魚の前では意味を持つということです。
分布と、食べる魚としてのダツ
琉球列島・小笠原諸島を除く日本各地に分布し、南日本から北日本、日本海、瀬戸内海、東シナ海まで広く見られます。旬は冬から夏にかけてで、初夏を超えて産卵期が終わると食味は落ちるとされます。
身は白身で淡泊、脂は少なめ。積極的に狙う対象にはなりにくいものの、食べられない魚ではありません。そして捌くと、背骨が鮮やかな青色をしていることに驚かされます。見た目のインパクトから敬遠されがちですが、これは有毒であることを意味しません。
外道という呼び方について
チヌやシーバスを狙っていて掛かるダツは、たしかに「外道」です。ただ、時速70km近くで泳ぐと言われる遊泳力、水面を突き破る瞬発力、そして人を傷つけうる顎——狙っていない相手として片付けるには、少し惜しい生き物でもあります。
夜の水面で何かが跳ねたとき、それがダツかもしれないと知っているかどうか。ライトの向け方ひとつが変わるだけでも、知っておく価値はあります。
出典・根拠
- ダツ - せとうちネット(環境省) https://www.env.go.jp/water/heisa/heisa_net/setouchiNet/seto/g1/g1chapter1/kikennaikimono/datsu.html
- ダツ - 写真から探せる魚図鑑 https://fishai.jp/663
- ダツ完全解説|危険な海水魚の生態・刺さった時の対処法 - 日淡といっしょ https://nittanwith.com/datsu/